生産者詳細

香港出身で、母親が香港人と日本人のハーフというステフ・イムが単身ロサンゼルスに渡り、バーテンダーとして働き始めたのは
2004年の事。その後彼はロスの高級レストランでソムリエの職に就き、トレーニングを積むうちにワインの魅力に取りつかれて
行きます。そして自らの手でワインを造りたいと考え、2008年からカリフォルニアのレイク郡やフランスのマディランでワインメーカー
としてのキャリアを積みました。
そして2010年、運命的な出会いが訪れます。 以前から高地のワインに興味を持っていたステフはイタリアのエトナを訪ね、
そこでフランク・コーネリッセンやサルボ・フォーティーと出会い、そして1000mに迫る高地にも畑が点在するこの地にすっかり
魅せられます。「必ずここで自分のワインを造る」という強い想いを抱いた彼は、2014年にエトナの土地のオファーを受けると
迷うことなく手に入れます。「この土地は、ワインメーカーにとって良いワインを造るための夢の様な場所なのです。
エトナ火山は昨年72回も噴火しました。つまり、常に新しい土壌、新しい表土、火山灰、岩石、その他諸々を提供し続け、それが
あちこちにこぼれ落ちているのです。これを見て下さい。これは新しい火山岩です。このような小さな岩石はもちろん何十年、
何百年も経てば、雨の助けを借りてミネラル分が分解され土壌の一部となり、ぶどうの木にとって素晴らしい土壌となります。
だから私たちは何も加える必要は無い。でも他の地域が土の状態を戻すために絶えず加えているミネラルは、ほとんどの場合
人工的に生産されたものです。地球のマグマから採れるミネラルが土壌に含まれているに越したことはありません。雨と風の
助けを借りれば、何もする必要はありません。そして、200年ごとに新しいミネラルを得ることができる。だから、ここは神から
与えられた場所のようだと思ったのです。」

そして2015年にステフはワイナリー「アジェンダ・アグリコーラ・シャラ」を立ち上げました。彼が手に入れた畑は標高700~
1200mの間に点在し、それぞれが異なるテロワールにあると共に、一部フィロキセラ以前に植えられた樹齢130年以上の
樹も含まれる、高樹齢の樹が植えられていました。ステフはこうしたテロワールやぶどうの個性を忠実に表現するべく、
無農薬かつ極力自然に近い形でのぶどう栽培、さらに畑によって醸造、熟成もアンフォラ、バリック、グラスファイバー製タンク
などを使い分けるなど、強いこだわりを持ってワイン造りに取り組んでいます。
彼の造るワインにはそれぞれの畑の標高に合わせて名付けられた「760」「980」「1200」の他、樹齢100年以上のぶどうのみ
から造る「チェンテナリオ」、オレンジワインの「ウブリアコ・スッラ・ルナ(月に酔って)」などがあります。この内「1200」が造られる
標高1180mの畑にはエトナには珍しい、樹齢100年前後のグルナッシュ(カンノナウ)が植えられています。 ステフはこのぶどう
から醸造したワインを、畑に埋めたアンフォラで熟成させています。
彼は言います。「これはぶどうを収穫する場所での輪廻転生のようなものなのです。その土地や植物相、微生物など、
そこにあるすべての要素を考慮しないぶどう、ぶどうのエッセンス、その様な果物を生産するのです。土地のDNAがあり、
そのDNAが果実に伝わっている。つまり、ぶどうはその土地のDNAを持っているということです。だからここで生まれたぶどうを
アンフォラで元々そのぶどうが生まれた場所に埋めるというのは、いいアイデアだと思うんです。」

ステフのユニークな発想とアプローチから生まれるシャラのワインは、その素晴らしさに魅せられる人々を確実に増やし続けています。